極細熱電対 極薄熱電対 応答性実験
目次
なぜ極細・極薄熱電対がいいのか?
各種熱電対 特性比較実験(その1)
各種熱電対 特性比較実験(その2)熱水への浸漬実験
各種熱電対 特性比較実験(その3)断熱圧縮実験
各種熱電対 特性比較実験(その4)断熱圧縮実験
各種熱電対 特性比較実験(その5)断熱圧縮実験
各種熱電対 特性比較実験(その6)断熱圧縮実験
ノイズについて
なぜ極細・極薄熱電対がいいのか? (理論編)
(最終結論をまず紹介します)
熱電対そのもののデータが不正確であれば、いくらデータロガーの精度(サンプリング周期や変換精度)を高めても無意味です。
従来の熱電対 極細熱電対 極薄熱電対
従来の熱電対 極細熱電対 極薄熱電対
部品との接触面積が小さく入熱量は少ない。放熱量は直径200μm線(断面積40000μm2)を通って放熱するので、線を通って逃げる放熱量が多く、昇温が遅い。 入熱量は小さい。しかし、放熱量は直径25μm線(断面積625μm2)を通って放熱するので、線を通って逃げる放熱量が、従来熱電対の約64分の1と小さく、センサー部の昇温が速い。 放熱量は従来の熱電対と同じだが、部品との接触面積が著しく大であるため、入熱量が大きく、センサー部の昇温が速い。

測定部温度予測式
物体の温度測定をする場合、熱電対測温部への入熱量、測温部へ一旦流入した熱の再放熱量、熱電対測温部の熱容量Cが問題となります。
即ち、熱電対の温度T熱電対は、
        
     となります。
  
  入熱については、
      Q入熱=物体との接触面積×熱伝導率×物体との温度差

このうち、熱電対の固定方法により、熱伝導率は異なりますが、いずれのタイプでも接触面積以外は同じ条件です。
入熱∝接触面積と考えてよいでしょう。

  放熱については、
大きく分けて、熱電対自体を経由しての放熱と、熱電対から雰囲気への放熱に分けられます。熱電対自体を経由する放熱量Qは、

     Q伝導=πr・k・(T熱電対測温部-T測温部以外の熱電対
r=熱電対の半径
熱伝導率=熱電対の熱伝導率
と表され、結局 Q伝導∝rとなります。

また、熱電対測温部から雰囲気への放熱は

    Q雰囲気=2πrl・k境膜・(T熱電対測温部-T雰囲気
        k境膜:境膜伝熱係数

となりますが、一般にガス雰囲気の場合、熱伝導率>>境膜伝熱係数であり、かつカプトンテープ(低熱伝導体)でカバー可能であり、熱電対の太さによりますが、熱電対自体を経由して逃げる熱量の方が問題と思われます。


以下多くの測定テスト結果を、逆時系列で説明させていただきます。
弊社製超高速熱電対の時定数を測定するには追って述べますが、ある温度からある温度へ10μsec程度の高速度で変化できる加熱装置が必要と考えるに至りました。


予測式による各種熱電対の予想される特性

熱電対タイプ 入熱量 放熱量
(熱電対自体経由)
先端熱容量(容積) 熱電対測定部温度
従来型(200μm径) 先端で点接触
著しく小さい
数値は不明
放熱断面積
4/3πr3
=4/3π(0.4/2)3
=0.034mm3
極細(25μm径) 先端で線接触
小さい
数値は不明
放熱断面積
πr2×0.025
=0.000013mm3

従来型に比較すると放熱量は1/62で、熱容量も1/2600
極細(50μm径) 先端で線接触
小さい
数値は不明
放熱断面積
πr2×0.05
=0.0001mm3

従来型に比較すると、放熱量は1/16で、熱容量も1/340
極薄
(200μm径×先端40μmt)
先端10mm長×0.8mm幅
面接触可能な場合、
S=10×0.8
=8mm2
(著しく大)
放熱断面積
πr2×10
=0.31mm3

入熱量に比較し、熱電対自体を経由する放熱は無視できる


実験結果
各種熱電対 特性比較実験(その5)
上記の特殊熱電対(25&50μm)をエンジン内部に挿入し、4サイクルエンジン内部の温度と圧力を計測しました。
本エンジンは4サイクルエンジンですので1工程で
50msecで吸気
50msecで圧縮
50msecで爆発
50msecで排気
以上の動作を繰り返します。

横軸1目盛50msec
赤線:先端25μm熱電対温度(単位は左側)
青線:先端50μm熱電対温度(単位は左側)
緑線:圧力でmVとして表示(単位は右側)
を表しています。
600回転(4サイクルを1回転として)/分

800回転

弊社の熱電対でエンジン内部の温度を測定すると以下の結果が得られました
最高温度
(先端25μ)
最低温度
(先端25μ)
ΔT25μ 最高温度
(先端50μ)
最低温度
(50μ)
ΔT50μ 4サイクルに要した時間 ΔP(圧力)
600rpm 750℃ 360℃ 390℃ 720℃ 480℃ 240℃ 200msec 253mV
800rpm 1260℃ 150℃ 1110℃ 940℃ 320℃ 620℃ 150msec 741mV
25μの方が正確に温度1サイクルの温度差を測定していることが分かります。
この様に弊社の熱電対は、エンジン内部の真の温度に近い温度を測定することが可能なのです。
以上の事から単にエンジン排気量を増大するのではなく、回転数を上げた方がよりエネルギー効率が高まると想像されます。
各種熱電対 特性比較実験(その4)
スターリングエンジンのシリンダー内部に弊社の極細熱電対先端25μmを埋め込み
温度プロファイルを取得しました。


主として教材用として販売されているスターリングエンジン。
左側のシリンダー下部にろうそくを灯すと高速回転します。
25μm極細熱電対をシリンダー内部に差し込んでいます。
以下実験結果です。
1サイクル間に複数の小さい波形が見えるのがわかります。これは極細熱電対が微妙な温度変化を感知している為です。
この測定結果を見ると、まだまだ応答速度に余裕があるようにみえます。
次回はさらにレスポンスが要求される、爆竹爆発時の温度を測定しようと思います。

各種熱電対 特性比較実験(その3)

当社では極細熱電対、極薄熱電対を開発しました。従来型と比較評価しました。

実験した熱電対の種類

<従来型 熱電対>

従来の熱電対
200μm  約400μm径の球
従来の熱電対先端

<当社開発極細熱電対>
極細熱電対
被覆
・ガラス
・テフロン
・セラミック
元線素線
・100μm径
・200μm径
・300μm径
先端素線
・25μm径
・50μm径
極細熱電対先端

<当社開発極薄熱電対>
極薄熱電対
被覆
・ガラス
・テフロン
・セラミック
元線素線-----先端極薄部
・100μm径----・40μm厚
・200μm径----・40μm厚
・300μm径----・60μm厚
極薄熱電対先端


実験方法

ステンレス容器(直径20cm×深さ20cm)の下から約40mmの表面に各種熱電対をカプトンテープで固定した。室温下、このステンレス容器へ液面が70ミリとなるよう速やかに熱水を注入し、温度変化を測定した。
温度測定装置:
    KEYENCE社製 GR-3000
サンプリング時間:0.1秒毎
応答速度実験
)実験結果

各種熱電対の応答速度と精度比較(最も初期のデータです)
応答速度比較グラフ

物体の表面温度測定については、応答速度上、極細型(25μ)が最良で、極薄型と極細型(50μ)が次に続く。
4.5秒後は極薄がもっとも高精度であった。

下記に6秒時点の温度差を示す。
6秒時点の温度 極薄熱電対との差ΔT
極薄熱電対 91.2℃ 0.0℃
極細熱電対(25μm径) 89.2℃ 2.0℃
極細熱電対(50μm径) 87.0℃ 4.2℃
従来熱電対 80.7℃ 10.5℃
20秒後にはほぼ同じ温度を指すが、6秒の時点では極薄型に比べ従来型は10℃以上低い温度であった。
当社熱電対(極細型、極薄型)は従来型に比べ、応答速度が速く、より高精度で測定でき、理論的に検討した結果を裏付けることとなった。 



●各種熱電対の性能及び適する用途

熱電対タイプ 熱電対自体の電気抵抗 補償導線への接続性 強じん性 微小部の計測 表面温度
精度
表面温度
応答速度
主用途
従来型
(200μm径)
× × × はんだで直接固定できる大きな物体
極細型
(25&50μm径)
微小部&物体表面温度
極薄型
(40μm 厚)
× 物体表面温度測定に最適



各種熱電対 特性比較実験(その2)  熱水への浸漬実験
1)実験方法
熱水を入れた容器に従来型(先端球状)熱電対と極細熱電対(KFG-25-200-200 先端25μm径)とを浸漬した。
2)結果
縦軸は温度(1マス約12.5℃)、横軸は時間(1マス100msec 浸漬時間約600msec)を示す。
極細熱電対は熱水に浸漬する前から(300msec以上前から)既に昇温している。これは熱水から上昇する蒸気の温度を拾ったものと考えられる。熱水に浸漬すると直ちに温度が飽和(均一)となっているが、従来型熱電対は蒸気に感応することはなく、熱水浸漬約600msec後でもなお緩やかに漸近昇温しつつあることが分かる。取り出した後の感応も同じことが言える。なお、極力蒸気温度を拾わないように努めた結果、上記極細熱電対の時定数は10msec以下であることが分った。



各種熱電対 特性比較実験(その1)  断熱圧縮実験

1)実験方法
シリンジ内に従来熱電対(先端ボール径1mm)と極細熱電対(先端線径13µm)を挿入し、ピストンを連続的に上下させ、 断熱圧縮時のシリンジ内大気の温度変化を測定した。
従来の熱電対では温度変化をほとんど捉えることができないのに対し、極細熱電対では0.1s以下で約90℃にまで達した。 また、ピストンの上下運動に連動した温度測定を行うことができ、再現性も確認した。


これらの熱電対が実装技術やエンジンの吸気温度測定などに広く使用され始めている。
もう少し詳しく各種熱電対の1サイクルにおける断熱圧縮+自然に生じたわずかな断熱膨張による温度比較データを下記に示す。


このデータから、変化する気体の温度測定に極細熱電対が極めて有効であることが分かる。
最も細い13μmの場合立ち上がりが速く、もちろん到達温度も最も高い。更に、反動で気体が膨張し温度低下した状態も正確に捉えている。 それに比較し、従来の玉状熱電対ははるかに応答が遅い。
この様に極めて高速リスポンスが温度測定できることが可能となったが、 肝心の温度測定器(データロガー)のサンプリング周期が通常20msec位と遅く、 データロガー側がネックとなった。そこで我々は少なくともサンプリング周期が 0.02msec以下のデータロガー(正確には熱電対用アンプ;電圧計と組み合わせることでいわばデータロガーとなる)を開発した。 下記はこのデータロガーで採取した断熱圧縮温度データであり。図-1は全容、図-2は主として昇温部を示しており、横軸の最小目盛は0.2msecである。

極細熱電対+超高速データロガーにより、例えば数1000rpmで回転するエンジン内の吸気温度変動の測定等も 実行されている。燃費改善などに役立つのではないだろうか。

図-1

図-2

ノイズについて

熱電対のノイズは原因不明なことが多いですが、原因としては宇宙からくるノイズ、モーターやIHクッキングヒーターからのノイズ等あり、なかなか原因を追究することが困難です。
最近気がついたノイズの防止方法としまして、計測装置を測定時100V電源から離し、電池駆動することで大きな効果が得られたことがありました。おそらく長い距離送電されて来ますので、宇宙からのノイズが大量に入っていると思われます。更に、データーロガー内部(回路はおそらく全て銅回路)温度が上昇すると測定値が変動するのでミニファン等で冷却すると精度が向上する様です。
一般的には、熱電対元線を太くする、短くする、シールド線とする等が重要です。
熱電対線をまるめて鉄ほうろうバットに入れ、更に上からもバットで包むとノイズは減少します。これもノイズが宇宙からくると考えると納得できます。


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